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戦争の人間像
高砂義勇隊

台湾に住む原住民たちは、かつて日本では高砂族と呼ばれていた。台湾が日本の植民地になった1895年から、彼らはこう呼ばれていたのである。彼らの言語はオーストロネシア言語系に属し、17世紀初頭に始まった中国人の植民以前からこの島に原住民たちは住んでいた。彼らの人口は1929年の時点で14万人であった。

日本の統治下で、原住民たちは皇民となるように植民地教育を集中的に受けた。日本軍に志願し参加するように奨励されたものの、正規の兵士としては採用されず、軍属しての地位しかあたえられなかった。

戦地においては、高砂義勇隊員たちの山地やジャングルでの戦闘力と適応力が高く評価された。南海支隊がポートモレスビー陸路攻撃に参加した際、山中の物資輸送のため、高砂義勇隊の隊員たちが朝鮮人軍属と共に全部で500名支隊に加えられた。(さらに、約2000名の現地人運搬人が支隊に同行した。)

戦闘において、高砂義勇隊の勇気と巧妙さは日本軍にとって有益であった。ブナ守備隊の指揮官の一人であった山本恒市少佐は、ジャングル戦における義勇隊員の適応能力を絶賛した。部隊の玉砕寸前に、山本少佐は最後の手記を高砂義勇隊の一人に託し、この隊員は何とか生き残ることができた。その手記は、隊員たちが射撃術に優れ、聴覚が鋭敏で敵の接近を一番最初に聞きつけることができたと記している。加えて、ジャングルの中を音を立てずに移動することができ、偵察能力にも優れていたと述べた。しかしこのような肯定的なコメントには、植民地住民に対する優越感をともなったもののようにも感じられる。ブナに派遣された鈴木正巳軍医は、高砂族の人々と仕事をした経験から、彼らの持って生まれた能力と困難な状況でも仕事ができるという点で山本に同意している。彼は高砂部隊の隊員を次のように形容している。

台湾の山野を原住地とする高砂族は民族的にみて大和民族とよく似ている。肌の色も似ているし、その生活習慣にも類似点が少なくないと思うのだ。澄んだ黒曜石のような瞳は魅力にあふれ、そろって美声で歌がうまい。若い義勇兵が「サヨンの鐘」を山上の村の椰子の樹陰で歌ったのをきいたことがあるが、抱きしめてやりたいと思うほどであった。

厳しい自然のなかでの行動の仕方を知っている高砂族の知恵は、『戦史叢書』に記された次のようなエピソードに見られる。堀井少将がクムシ河をいかだで下った後、残りの部隊が幅120メートル深さ2メートルの河をどうやって渡ろうかと思案していた際、その解決方法を高砂義勇隊員が示したのであった。彼は直径6センチほどのなるべく白い木を約2メートルの長さに切りそろえ、それを4本か5本使って小さないかだを作ることを提案した。このいかだは人間を運ぶのではなく、兵器と衣類を運ぶ目的のものである。(白い木は色の濃い木よりも軽いと考えられた。)次にこのいかだを、河が曲がっている地点で流れの中心に向かってできるだけ押し出した。兵士たちはこのいかだにつかまり、河の流れにのって向こう岸にたどり着くのを待てばよいのである。この方法で、部隊は河を渡ることができた。しかし、体が弱っていたものはいかだにしがみついていることができず、多くの兵士が溺れ死んだ。

日本軍がブナから退却した時点で、高砂義勇隊員の生き残りは65名のみで、朝鮮人軍属も15名しか残っていなかった。しかしこの人数が、南海支隊のポートモレスビー攻撃に参加した最初の派遣人員の生き残りかどうかは定かではない。

戦争中の努力や貢献にもかかわらず、戦争による負傷や死亡に対して高砂義勇隊員とその家族は十分な補償を受けることはなかった。その上、彼らは軍属の身分や国籍問題のために、恩給制度からもはずされてきた。元隊員の何人かは今でも彼らの貢献の認定を求めて戦っている。

田村恵子記

参考資料
防衛庁防衛研究所戦史室編『戦史叢書南太平洋陸軍作戦1:ポートモレスビー-ガ島初期作戦』1968年。朝雲新聞社刊。178頁。
防衛庁防衛研究所戦史室編『戦史叢書南太平洋陸軍作戦2:ガダルカナル-ブナ作戦』1969年。朝雲新聞社刊。212頁。592頁。
吉原矩『南十字星:東部ニューギニア戦の追憶』1955年。東京:東部ニューギニア会刊。30頁。
鈴木正巳『ニューギニア軍医戦記:地獄の戦場を生きた一軍医の記録』2001年。東京:光人社刊。44頁。

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