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戦争の人間像
医療制度

医療制度 東部ニューギニア作戦において、日本陸軍の医療及び患者輸送制度の主要な役割を担ったのは、ギルワにおかれた第67兵站病院の主力と、ココダに設置された第一野戦病院、そしてオーエン・スタンレー山脈を越えての前進経路の各所に置かれた救急処置所であった。ギルワの病院はその地域の中心病院の役割を果たし、かつ重病傷者がラバウルに移送される際の中継場所であった。そこには、戦場で必要な処置や治療を行うための医療器具や人員が整っていた。一般的に兵站病院では、375人から400名の医療担当者のもと、最大約1,000名くらいの患者を収容するようになっていた。しかしギルワでの極限的状況は、看護をする医療担当者に非常に大きな負担をあたえていた。たとえば、1942年11月15日の時点で、病院の勤務人員は57名だったが、患者は2,264名に達していた。

ココダに設置された移動野戦病院では、兵士たちができるだけ早く原隊に復帰できるように前線近くで治療をした。簡単な手術は野戦病院ですることができたが、重傷者は兵站病院まで移送された。勤務要員は軍医15名を含む20名ほどの将校と、患者500名の看護と移送を担当する兵員250名で占められていた。野戦病院の状況は一般的に貧弱で、ベッドもなく、雨風を防ぐ手立ても限られていた。日本軍進攻時の、ココダの野戦病院の様子が次のように語られている。

私は傷兵たちとわかれ、しばらくゆくと巾10メートルぐらいの川があった。流れがはげしく、真白い川波をたてている。その川をわたると、1メートルほどの木標に「野戦病院入口」と墨で書いてあった。あたりには盛土がならんでいて、生木の白い墓標が何本も立っている。私はその間を通って、密林の中に病院をもとめた。そこには豚小屋のような病棟が連なっている。みな細い丸木でこしらえた掘ったて小屋で、天井がひくく、屋根へならべたバナナの葉が黒く腐って滴が落ちている。その小屋の中には重傷の兵が、肩と肩とがふれあるほどに横たわっている。

病床は、地面の上に青葉をしき、あるいは丸木をならべただけで、一枚の毛布もない。血痕の黒い破れた軍服のまま、ごろごろと寝こんでいる。血の気のうせた彼らの顔には、高い木の枝から雨滴がおちかかるが、それを拭う力がない。傷の痛みに苦しむものもあろう。高い熱のために悩むものもあるだろう。生きるのを願っているのか、死をまっているのか。たえがたい苦痛をいだいているであろう何百かの傷病兵がいるが、たれ一人言葉をたてるものもなく、前線の密林の病院は、死のような静寂のそこにしずんでいる。

前線近くでは、衛生兵が救急処置所で傷病兵を治療した。一般的に、衛生兵が使用できるのは初歩的な医療品だけで、負傷兵を避難させるのは、専門担送要員や前線の兵士たちに頼った。加えて、兵站病院へ通じる道にはいくつかの中継所があり、そこで基本的な治療が行われた。
傷兵後送の準備はととのった。原住民の小屋のあたりから、一列にならべられた担架のうえには、義勇隊の青年の手で傷兵がのせられた。けわしい山地に転落しないように、体を蔓でかたく結びつけられたのが、痛々しくみえた。陽よけのために、その顔の上には青葉の枝がのせられた。 …

青年たちは、みな頬に緊張の色をみなぎらせて担架の棒をにぎった。その重い棒には、傷兵の生命がかかっている。これから幾日かの間、峻嶮や渓谷を克服して行かなければならない。青年たちの眉宇には、決死の覚悟がみえている。

スティーブ・ブラード記 (田村恵子訳)

参考資料
AWM 55 (EP-29), p.3
滝田憲次著『大洋は燃える』1955年。東京:華頂出版社。Pp.106-107. p. 136.

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南海支隊の侵攻
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医療制度
久枝秋吉
高砂義勇隊
南海支隊職員
ポートモレスビー作戦(豪軍)



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