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戦争の人間像
マラリア

健康で身体が丈夫な者でも、マラリアにかかると衰弱する。1942年に東部ニューギニアで戦闘をしていた日本軍兵士は、身体的な消耗と栄養不良や予防手段の軽視が原因で、多数の兵がマラリアにかかって死亡し、部隊の戦闘能力が極度に低下した。マラリア感染はほとんどの部隊で発生したが、作戦当時は医薬品の供給が限られ、治療のために訓練された要員も不足していたため、マラリアによる死亡率が異常に高かった。

南海支隊指令本部はマラリアの危険性を認識していたので、部隊のラバウル出発を前にした1942年7月16日に、次のような命令を出した。

マラリア防止に関しての覚書(英文原文より翻訳) 1. 南海支隊発令の「マラリア感染防止法」の第1号命令に則り、マラリア防止用内服薬は上陸2日前から服用すること。(毎夕食前に硫酸キニーネ剤一錠、10日ごとにプラスモキン剤一錠を服用すべし)この薬の服用は必ず守ること。(服用を監督する担当者を選ぶべし) 2. 前線部隊に対して、マラリア防止用医薬品の配布の重要性を強調するべし。10日から2週間分の薬剤を配るが、人員の三分の一を治療するとして30日分の薬剤が必要となる。(原文ママ翻訳) 3. すべての人員に対して十日分のマラリア防止用内服剤を配布するべし。(硫酸キニーネ剤10錠及びプラスモキン剤一錠)各分隊長は薬剤の配布をうけ、保管すべし。以後20日間分の薬剤は各部隊長が保管し、10日分ずつ配布すること。
4. 蚊除け軟膏(一人当たり2個ずつ配布)と蚊取り線香は必ず使用すること。 5. (マラリアや他の伝染病防止のために)徴用原住民たちを宿泊所から離て収容すること。

このような発令にもかかわらず、防止対策はほとんど無視され、ニューギニア上陸3日以内にマラリアの症例が発生した。蚊帳や蚊除けネットそして手袋も兵士たちに配布されたが、使い心地や使い勝手が悪いためほとんど使用されなかったり、捨てられてしまった。虫除けクリームや蚊取り線香は使用されたが、必要最小限の食料が不足している状況下で、これらも不足した。さらに、マラリア防止用薬剤の服用も、指導の不行きとどきや薬剤不足、そして厳しい戦闘状況下における具体的な手順が確立していなかったために、組織的に順守されることはなかった。蚊退治の方策も、基本的な衛生手段が放棄されてしまった戦闘現場では、ほとんど実施されることがなかった。

マラリアにかかった兵士たちは、キニーネとアテブリンとプラスモキンの組み合わせで治療を受けたが、薬剤供給が途切れ、治療が何日も中断することもあった。重症者のみが野戦病院に後送され、軽症者は戦闘に早く復帰するために所属部隊の後を追った。このような治療対策に衛生状態の悪化と栄養失調が重なったため、連合軍の場合よりも高い死亡率が発生した。赤痢にかかった兵士がマラリアに感染すると、ほとんどが死亡した。

スティーブ・ブラード記 (田村恵子訳)

参考資料
オーストラリア戦争記念館資料(AWM55 5/3南海支隊命令資料、1942年5月13日より7月10日まで)、p.16。

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